相続が発生した場合には,相続人間で遺産をどのように分けるのかを協議する必要があります。具体的には,①相続人が誰なのか,②どの財産が遺産に含まれるのか,③遺産の価値をどのように評価するのか,④誰がどの遺産を取得するのか,という各事項を協議により確定しなければなりません。
相続人間の協議で上記事項を確定することが困難な場合には,家庭裁判所の手続である遺産分割調停又は遺産分割審判により解決を目指すことになります。
正確な知識が無いままに各相続人が自身の希望を主張するだけでは,なかなか話し合いは纏まりません。また,他の相続人からの提案に対して安易に同意してしまうと思わぬ不利益を被ってしまうこともありますので,専門家による助言のもとで慎重に協議に臨むことをお勧めします。
遺言とは,被相続人の最終的な意思を表示するもので,相続分の指定,遺産分割方法の指定,相続人以外への遺産の遺贈といった相続に関する様々な効果を生じさせることができます。
代表的な遺言の方式としては,「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
自筆証書遺言とは,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,押印して作成する方式の遺言書です。
経済的負担が少なく手軽に作成することができますが,軽微な方式違反でも遺言全体が無効になってしまうことがあるため,作成は慎重に行わなければなりません。また,作成後の紛失や偽造の危険があるといったデメリットもあります。
また,自筆証書遺言は,遺言者の死後,家庭裁判所で検認手続を取らなければならず,これに違反すると過料に課されますので,注意が必要です。
公正証書遺言とは,公証人役場において,証人2名の立会のもと,公証人に遺言の内容を伝え,公証人が筆記した内容が正確なことを確認した上で,遺言者と証人が署名・押印することによって作成する方式の遺言書です。
作成には公証手数料が必要となる反面,方式違反が問題となって後日無効と判断される可能性が小さいことや,公証人が原本を保管するため紛失や偽造の危険がないこと,家庭裁判所の検認手続が不要であること等のメリットがあります。
相続人は,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に,家庭裁判所に申述の手続をすることで,相続の放棄をすることができます。
相続放棄をしないまま上記3か月の期間が経過すると,相続を承認したものと見做され,以後は相続放棄ができなくなってしまいますので,注意が必要です。ただし,この3か月の期間は,家庭裁判所に請求することによって伸長することができます。
相続放棄をした場合には,初めから相続人とならなかったものとして扱われ,被相続人の一切の権利義務を承継しないことになります。そのため,遺産の中に多額の債務がある場合には,相続放棄をすることによって,その債務の相続を免れることができます。
遺留分とは,配偶者,子及び親である相続人(兄弟姉妹である相続人は含まれません)について,法律上取得することが保障された遺産の割合です。本来,遺産は,被相続人が自由に処分することができるのが原則ですが,一定範囲の相続人については,その者の生活保障を趣旨として,遺留分による最低限度の遺産の取得が保障されています。
典型的な例として,被相続人が,遺言によって遺産の全てを特定の相続人に遺贈することがあります。このような場合,遺贈を受けた相続人以外の配偶者,子又は親である相続人は,自己の遺留分を侵害されたことになります。そして,遺留分を侵害された相続人は,侵害した相続人に対し,自己の遺留分に係る財産の返還を請求することができます(遺留分減殺請求)。
遺留分減殺請求権は,相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは,時効によって消滅してしまいますので,注意が必要です。
よくあるご相談内容
相続や遺産分割のルールについて,法律でどのように定められているか詳しく知りたい。
誰がどの遺産を取得するのかについて話が纏まらない。
不動産など遺産の評価について意見が折り合わない。
被相続人の生前に,一部の相続人だけが多額の金品を受け取っており,納得いかない。
被相続人の生前に,献身的に被相続人の生活を支えてきたのだから,他の相続人よりも多くの遺産を取得できないか。
遺産分割協議が纏まったので,合意された内容を文書化してほしい。
遺言書を作成してほしい。
相続放棄をしたい。